マクドナルドで昼食をした時のことでした。
私の座ったはす向いの席に歳は55歳ぐらいでしょうか、白い歯を大きく見せてにこやかに笑っている男性が座っていました。
そして彼の向かいには65歳ほどの小さな女性が座り、二人楽しそうにハンバーガーとアイスコーヒーを飲みながら話をしていました。
私は食事をしながら、時々目にはいる笑顔を絶やさないその男性の顔がとても輝いて見え「ああ、こんなに素敵な笑顔を持っている方がいるんだ・・」と深く感心していました。
彼の黒縁のメガネの中には細く微笑んでいる小さな目が見えました。
しかし、しばらくして彼は目が不自由なことがわかりました。
そして、二人の会話が自然と耳に入ってきました。
大筋の内容はこうです。
「おばあさんは足が悪いのだから長い距離を歩けないでしょう。今日は車椅子で来なかったけどいつもは車椅子を使っているでしょう。だから今度行こうとしているところは初めての場所なのだから私があらかじめ場所を下調べしておいてあげますよ。その方が、道に迷わないし、地下鉄で移動するにしてもエレベーターがどこにあるかがすぐにわかったほうが助かるでしょう。」
「でも、あなたも忙しいでしょうし迷惑をかけるからいいですよ。」
「いやいや、そんなことないですよ。おばあさんの行きたいところは会社の帰りに寄れますし、それほど遠い駅ではないですから心配しないでくださいよ。」
「じゃあ、お願いするわね、すまないね・・・」
といった感じです。
そして、二人はその後15分ほど話をして食事を終えました。
おばあさんが立ってテーブルを片付けていると、彼は「おばあさん、このアイスコーヒーのプラスチックカップは僕が持って帰るので捨てないでください。これには蓋がついているから、水を飲むときにこぼさないで飲めるから便利なんですよ。おばあさんの分も一緒に持って帰るから頂戴ね。」
「ああ、わかったよ。じゃあビニール袋に入れてバッグに入れておくから、持って帰ってね。私はテーブルのごみを捨ててくるから」
と、まるくなった背中をさらにまるくしてとゆっくりとトレイを持って行きました。
その足取りはとても遅く1mを歩くのに5秒程はかかるほどでした。
一方、目の不自由な彼は片方の手でテーブルの端をおさえ、紙ナプキンでパンのくずや
飲物の水滴が残っていないようにとテーブルをキレイに何度も拭いていました。
そしておばあさんが戻ってくると「おばあさん、テーブルの上はもう汚れていない?大丈夫?」と確認していました。
そしておばあさんに持っていた折り畳み傘の取っ手を握ってもらい、彼はもう一方の先端を握り立ちました。
そしてもう一度、イスがテーブルにちゃんと収まっているかを手で触って確認し2人一列になってゆっくりと店を出て行きました。
私はこの光景を見て今日は本当にすばらしい光景を見たと感動しました。
目の不自由な彼は足の不自由なおばあさんのために場所を確認してきてあげようとする思いやり、そして、テーブルが汚れていないか、イスは正しく並べられているかといった
次のお客さんが気持ちよく使えるようにとの心遣い、本当にキレイな心ではありませんか。
そして、足の悪いおばあさんは彼の手を引き、歩くスピードはとても遅くとも自分が案内するほうが彼は危なくないし、楽であろうということだからでしょう。
2人を見ながら、その心は崇高であり自分ができることを少しでもしてあげようといった暖かい思いやりの心に触れ、とても気持ちが洗われた一時でした。