先月、上海を訪れた時にシェアエコノミーの象徴とも言えるシェア自転車があちらこちらで見かけられ、ほとんど自分の自転車に乗っている人はいませんでした。昔は、黒い色の自転車(自己所有)が行き来をしていたのに、もはや、その姿はありませんでした。
この、シェア自転車が生まれた背景は皆さんもご存知かも知れませんが、中国の大学からです。中国の大学は非常に大きくて学内を移動するのに大変です。このために、皆が自由に使える自転車があったら便利なのに・・・といったことから始まりました。
そして、このニーズに合わせてアリババやテンセントがスマホ決済サービスを普及させたことにより、今までのように指定された場所で借り、指定された場所に返却するといったレンタル自転車ではなく、大学内だけでなく、好きな時に、好きな場所で、好きな時間だけ借りられるシェア自転車が生まれたわけです。
しかし、このシェア自転車をビジネスで成功させるにおいては、事業者は損益分岐点の時期を4ヶ月目よりと予想していたのですが、自転車の破損や修繕費が大学内とは違い予想以上にかかっているようで、この事業の実情は我々が予想するほどあまり利益が出ていないようです。確かに2017年に入って、事業会社の売却や合弁のうわさが耐えないようですからね。
もし、私がこの事業を数年前にお願いされたとしたらどう考えかと言いますと、確かに皆が喜んでくれる事業であるものの問題点もたくさんあります。このシェア自転車の事業を進めていくには修理やタイヤへの空気入れ、そして、あちこちに放置する事もできないでしょう。駐輪場の確保も必要ですし、事故があった場合は自転車の機能の不具合が問題によるものなどといった事件が多発する可能性もあります。こういったことを考えますと関連業務を行う人をかなり雇用せねばなりませんから、事業として安定した利益をもたらすことができるのか?を、まず疑問に思ったことでしょう。この事業は始めに大きな投資をして一挙に市場を押さえるような会社が出たらもう負けですしね。
また、自転車があちらこちらに放置されてしまえば、役所よりのクレームや取締りが厳しくなり、更にコストは増加してしまいます。でも、安全、便利、安いといったサービスがしっかりと消費者に提供できなければ、評判は悪くなり事業は暗礁に乗りあげることでしょう。そういった、事業の難しさを感じていましたが、何と言っても気になったのは、やはり「タイヤの空気」ですね。どんな乗り方をするかもわからず、体重何キロの人が乗るかもわからず、更には走る道路の状況もわからなければすぐにタイヤはパンクしてしまいますよね。
ですから、それを補修点検するだけでも大変だ!と思っていたわけですが、今回このシェア自転車を実際に見てわかりました。
この自転車はパンクしないのです。「パンクしない?」と不思議に思われますよね。事実、しないのです。それは、タイヤは全てゴムの塊だからなのです。つまりチューブなしです。これならパンクなどあるはずがありません。そして、ブレーキはドラム式ブレーキです。
皆さんが使っているような自転車のフィレームにゴム板を押し付けて止めるようなタイプではないのです。
そして、自転車ランプもついていません。無論、変速ギアーなどもありません。つまりこの自転車は頑丈で、女性も乗れて、パンクせず、ブレーキの効きのいい安価な自転車でありさえすればいいのです。
しかし、その便利なシェア自転車は、駅の周りの歩道にはぎっしりと停められ、それが歩道を防ぎ歩行者の邪魔となっています。また壊れた自転車も空き地や歩道トンネルの中に捨てられたりもしていて、町の美しさを壊しています。
こういった様子を見ながら、いつまでもこのブームは続かないように私には思いました。このまま行けば、きっともっと厳しい規制を自治体はかけてくることでしょう。
一方、日本でもこの分野に進出しようとしている会社がいくつか名を上げていますが、彼らはこういった実態を当然知っているでしょうから、どうやって安定した利益を上げていくのでしょうか?
「日本人は中国人よりマナーがよい」という前提でこの事業に参入するのでしょうか?それともこの事業ではなく、違った事業作りの礎とするためなのでしょうか?
また、日本ではタクシーに替わる白タクの配車サービスが禁じられていますが、他の国ではこのサービス事業の勢いが非常に強まっています。そして、もちろん中国も同様です。
書きたいことは多々ありますが長くなりますので、この辺で終わりにしましょう。