私達の身体は、小さな細胞の固まりで出来ています。その細胞のひとつひとつは脂質やタンパク質で作られています。この細胞を構成する物質は不変ではなく、新陳代謝によって日々入れ替わっています。これは皆さんも知っていますよね。
その際、脂質は脂肪酸に、タンパク質はアミノ酸やアミンという物質に分解され、それぞれがにおいの成分となっていきます。
つまり、細胞が生きていれば、古くなったもの・要らないものは細胞膜を通じて外に出されていきます。毎日、においの元が作られていくわけです。ですから、身体が臭うのは当然のことといえます。
この新陳代謝がスムーズでないような疾患においては身体からにおいを発するといえます。例えば、糖尿病・肝硬変・腎不全などがあります。
しかし、実際面では身体は全身を皮膚で覆われているため、内臓のにおいがそのまま外に発せられることありません。その代わり、皮膚や体毛の密集部分(頭部、腋の下、陰部)、内臓が体の表面に露出する部分(口、気道、肛門など)からはにおいが放たれていきます。
また、皮膚が放つにおいの元となるものに皮脂があります。足が汗ばむ原因でもあります。「皮脂」とは皮脂腺から分泌される脂のことです。においの元となるから悪い成分というわけでなく、ちゃんとした働きがあります。それは皮膚を滑らかに保ち、乾燥から守る自然なクリームの働きです。ですから、この自然の脂をあまり取りすぎるのも良くないというわけです。
これが空気に触れて酸化したり、皮膚の表面に棲んでいる細菌によって食べられて分解されると臭い物質に変化、揮発性の臭いを発するようになります。
ですから、においの大半はこの脂肪酸がいわば体臭の主犯格だと言っていいでしょう。
このため、脂っぽいものをたくさん食べると皮脂が多くなり、同様に作られる脂肪酸の量も増えるため体臭はきつくなります。 また皮膚にしわがあったり荒れていたりするとその溝に脂肪酸がたまり、細菌が繁殖してにおいの程度が強くなります。
脂ぎっている男性が「くさい」と言われてしまうのも、実はこのせいです。男性ホルモンは皮脂腺の発達を促し、かつ皮脂の分泌を盛んにします。ですから中高年の女性も女性ホルモンの衰えのためやや脂体質になります。男性は脂ぎっているのが普通であり、それだけに細菌による脂肪酸の生成も多くなるので女性より身体がにおうのも当たり前といえます。
このほか、最近話題の中高年にとってはいやな言葉の「加齢臭」も脂肪酸が原因と言われています。40歳を過ぎると娘などに「お父さん、臭いよ!」と言われることがありますね。
皮脂の成分の中で「パルミトオレイン酸」という脂肪酸が増えていき、このパルミトオレイン酸が「ノネナール」というくさい物質に変化した結果、中高年特有の体臭が生じるのです。
加齢臭は老化現象の一つですので仕方がないため、過剰に気にする必要はありませんが、体臭が自身でも気になるぐらいきつくにおうようになったら注意が必要です。
また、加齢臭は生活習慣病と密接に関係しているとも言われますし、体臭が様々な疾患のサインである場合も少なくありません。
例えば、糖尿病や脂肪肝などの疾患は、脂肪酸が血液中で増え、皮膚表面の脂肪酸も増加するため、体臭が顕著になりますし、神経疾患のパーキンソン病も皮脂分泌が活発化し、やはりにおいが強くなります。
ですから、異常な臭いには注意をしてください。
最後に、体臭を防ぐ方法としては、身体を清潔に保つことです。
入浴時はしっかりと身体を洗いましょう。人によっては小まめに入浴することも必要です。一方,腋臭(ワキガ)などにおいて細菌や湿り気をためないことですから、腋毛を剃る。殺菌剤をつけるといったこともお勧めです。デオドラント剤の中にはシルバーイオンが入ったものが多くあるのは細菌目的のためです。
身体の臭いと良いお付き合いをしていきましょう。