先週は韓国におりましたが、すでに韓国では栗の時期が終わり、マツタケと松の実の季節となっていました。
しかし、今年は雨量が大変少なかったことで松茸は不作、街中でトラックでマツタケを運んできて売っている光景も見かけることがありませんでした。
しかし、健康維持で人気のある松の実に関してはそれ程の不作ではないようです。
おそらく、松の木は砂を防ぐ木として海岸線に植えられたりしていますから、水が少なくても成長できるからなのでしょうか。
さて、「松の実」と言ってもピンとこない方がいるかもしれませんね。
これは松かさを割ると芯に沿って出てくる種子があり、大きさは大人の中指の爪ほどです。
その種子の殻の中にある胚乳を「松の実」と言っています。
胚乳の大きさはスイカの種の1.5倍程で丸みをおびています。
味にはほとんどクセがなく、硬くもないので韓国では皆さんよく食べる木の実の一つです。
私がこの実を知ったのも友人からのプレゼントでした。
「とても体によいから送りますよ!」いって送ってくれたので、毎朝大さじ3杯食べてきました。
でも、「あの松かさの実の中が食べられる?」と、お思いでしょうが、実は我々が普段見ている松かさは黒松や赤松ですので松かさは小さく、幼稚園児の握り拳ほどです。
韓国の松は「朝鮮五葉松」といい、松かさも日本と比べると4倍ほど(大人の握り拳1.5倍ほど)あります。
ですから中の種子も大きいわけです。
しかし、この松かさを取るのは、とても危険な作業なのです。
松かさのなっているところは木の先端です。
木の高さは15m程もあり、その先端まで登り、そこから7mほどの棒を横に伸ばして、周りにある松の木の先端に実っている松かさを引っかき落とすのです。
7mほどの棒を使う理由は周りの木は5m程の間隔をあけて植えられているためです。
先端まで登ればすぐ脇になっているわけではないのです。(植林の間隔を狭くしてしまうと木の枝がぶつかり合ってまっすぐに健康に育ちませんから間隔をあけています)
一方、木の先端で自分を支えるのは木の枝のみです。
先端の幹一本だけですと折れる可能性が高いですから、先端から伸びている枝木を幹に引き寄せ紐でしばって一まとめにして、折れないように工夫しています。
しかし、7mもの棒を松かさめがけて振り降ろしたり、引っぱたりと何回もやり続けるのですからかなりの力がいります。
やる度に先端はぐらぐらとゆれ動くので、もし落下すれば大怪我することは確実です。(この為、仕事も重労働ですし、事故の対応も考え4人以上のチームを組んで行うようです。)
木に登る方法も靴に鋭いスパイク器具を縛りつけ、これ以外は何もつけず素手と脚の力で上っていきます。
ロープもなしです。
まさにプロのわざです。
私は高いところは嫌いですし命が惜しいので、こんな危ない仕事はとてもまね出来ません。
そういった危険をおかして採取された松かさは、長さ2m程の大きな袋にぎっしりと詰められ山肌を転がして山麓まで下ろします。
そして村に持ち帰った後、機械で松かさから種子を取り出し、更に別の機械で胚乳と殻を選別します。
こうして取り出された胚乳は食用になり、廃棄物である松かさや殻は種火付け材に再利用されるそうです。
さて、採取された松の実ですが、お店では実がそのまま袋や缶詰にされたり、酒(松の実マッコリ)として店いっぱいに置かれ販売されています。
あの小さな種を集めて、これ程までの商品を製造するのですから、あの危険な仕事によってどれほど多くの松かさが採取されたのでしょうか。
私はただただ商品を見ながらそのことを思いましたね。
でも、この松の実はとても健康・美容によいことから韓国ではすごく人気のある木の実の一つです。
美肌作り、滋養強壮、老化防止、血行促進、コルステロールの低減などと何にでも効くといった「万能な木の実」といった感じです。
事実、中国では「長寿果」として珍重され薬膳料理や宮廷料理などにもよく使われています。
その一つの理由は松の実には高血圧や血栓抑制、コレステロールの低下、動脈硬化予防などの効果のあるオレイン酸、リノール酸などの不飽和脂肪酸が豊富に含まれているためです。
また、五葉松の種子にはそれ以外にもピノレン酸(オクタデカトリエン酸)という五葉松にしか存在しない脂肪酸も含まれています。
だからこそ、現在でも松の実は「長寿果」として珍重されているのです。
こういった事で、韓国ではとても人気のある松の実ですが、同じような内容で日本ではセサミン成分を持つゴマがありますが、松の実とではどちらがよいのでしょうかね?
私は松の実だと思っていますが、ただ松の実の方が圧倒的に高価な点が難点です。
やはり何といっても採取が大変ですから当然なことですがね。